大久保園
人をつなぎ、街をつなぐ。大久保園が育ててきた80年

写真 柏木成則さん
大久保園が80年守り続けてきたもの
商店街を歩いていると、ふとお茶の香りが漂ってくる。
京成大久保駅からほど近い場所にある「大久保園」。
昭和20年(1945年)の創業以来、この場所で約80年、お茶を通して地域の暮らしを見つめ続けてきたお店です。
今回お話を伺ったのは三代目店主 柏木成則さん。
取材を始める前は、「老舗のお茶屋さん」の歴史を聞くつもりでした。
しかし、話を聞けば聞くほど感じたのは、お茶の話だけではありませんでした。
そこには、人とのつながりを大切にし、この街をもっと良くしたいという、一人の地域人の姿がありました。
「変わらない味」は、毎年つくり直している
「お茶は毎年同じ味じゃないんですよ。」
店主は静かにそう話します。
大久保園では掛川茶を中心に扱っています。
しかし、同じ掛川でも畑が違えば味が変わり、天候によっても品質は毎年変わります。
だから新茶の季節になると、毎年静岡へ向かい、その年のお茶を一つひとつ確かめます。
そして複数の茶葉を組み合わせる「合組(ごうぐみ)」という技術で、大久保園らしい味をつくり上げます。
目指しているのは、
「コクで始まり、最後に香りがふわっと広がるお茶」。
変わらない味を届けるために、毎年変え続ける。
その言葉からは、長く愛されるお店の理由が伝わってきました。
お茶を売るのではなく、人と向き合う
「どんなお茶が好きですか?」
初めてのお客様には、必ずそう尋ねるそうです。
濃い味が好きなのか。
さっぱりした味が好きなのか。
季節はいつなのか。
その人の好みを聞きながら、一緒にお茶を選んでいく。
一番人気の「水月」はあります。
でも、それを押しつけることはありません。
目の前にいる人にとって、一番合う一杯を届ける。
その姿勢は、お茶屋さんというより相談相手のようにも感じました。
商店街とともに流れる時間
「この街は、流行が半歩遅れてやって来るんですよ。」
店主は笑いながらそう話してくれました。
ハンバーガーショップ。
タピオカ。
美容室。
接骨院。
全国で流行したものが少し遅れて商店街へやって来て、また新しい流行へ移っていく。
そんな景色を何十年も見続けてきました。
それでも、大久保商店街には今も学生が歩き、人の流れがあります。
街は少しずつ姿を変えても、人が集まる場所であり続けています。
時代に合わせて、新しいお茶屋さんへ
約3年前から始めた抹茶のテイクアウト。
若い世代にもっと気軽に立ち寄ってもらいたい。
そんな思いから始めた新しい挑戦です。
店主は言います。
「まずは飲んでもらうこと。」
抹茶をきっかけにお店を知り、お茶の美味しさを知ってもらえたら嬉しい。
伝統を守ることは、昔のままでいることではない。
今の暮らしに合わせて、お茶との出会い方を変えていくことでもあるのです。
地域のお茶屋さんだから見える景色
「子どもたちが大きくなるのを見るのが楽しみなんです。」
その言葉が、とても印象に残りました。
子どもの頃に来ていた子が、高校生になり、大人になっていく。
長年通ってくださったお客様が来なくなり、少し寂しさを感じることもある。
地域のお店だからこそ、人生の時間を一緒に歩んでいる。
大久保園は、お茶を売る場所である前に、人の暮らしに寄り添う場所なのだと感じました。
守りたいのは、「煎茶のある暮らし」
抹茶が人気を集める今だからこそ、店主が未来へ残したいのは「煎茶文化」です。
急須でお茶を淹れること。
湯気を眺めながらひと息つくこと。
家族や友人とお茶を囲むこと。
そんな何気ない時間こそ、日本のお茶の文化なのだと教えてくれました。
「習志野はいい街だ」と思ってもらえるように
取材の最後に、「店主にとって習志野市とはどんな街ですか」と尋ねました。
返ってきた答えは、とてもシンプルでした。
「育った街だから、愛着があります。」
現在は大久保商店街の会長として、祭りやイベントにも携わっています。
そこで大切にしているのは、人と人をつなぐこと。
「習志野はいい街だ。」
そう思ってもらえる人を一人でも増やしたい。
その言葉からは、お茶屋さんとしてだけではなく、一人の地域人として街と向き合う姿勢が伝わってきました。
今回の取材で印象に残ったのは、お茶の話以上に「街」の話でした。
変わらない味を守るために、毎年静岡へ足を運ぶこと。
商店街の会長として、人と人をつなぐこと。
子どもたちの成長を見守り、地域の変化を受け止めながら、新しい挑戦を続けること。
そのすべてが、「この街で生きる」という一つの姿につながっていました。
narashino magでは、お店だけを紹介したいとは考えていません。
その場所で暮らし、その場所を大切に思う人の言葉を記録していきたいと思っています。
大久保園は、お茶を通して人をつなぎ、街をつないできたお店でした。
そして店主の「習志野はいい街だと思ってもらいたい」という言葉は、この街の未来を願う、
まっすぐな想いそのものだったように感じます。

大久保園
〒275-0011 千葉県習志野市大久保3-15-3
営業時間 平日・土曜10:00~19:00
定休日 毎週日曜日
www.okuboen.com