Cafe The World
「時間を止めるカフェ」に流れる、もうひとつの時間。

写真 砂田 光春さん
時間を止めるカフェ。
大久保で人の時間を見つめてきた「Cafe The World」
習志野市市大久保にあるカフェ「Cafe The World」
店名を聞くと、少し不思議な名前に感じるかもしれない。
その名前には、「時間を止める」という意味が込められている。
忙しい日常から少し離れて、コーヒーを飲みながらゆっくり過ごしてほしい。
そんな思いから、この名前が付けられた。
そしてもう一つ、「ワールド」には、世界各地から集まるコーヒー豆という意味も重ねられている。
今回、話を聞かせてくれたのは、店を営む砂田さん。
いつも何気なく利用しているこの場所には、店を始めた理由から、コーヒーへのこだわり、そして大久保という街で積み重ねてきた長い時間があった。
「好きな仕事を続けるなら、自分でやるしかなかった」
砂田さんがカフェを始めた背景には、コーヒー業界の現実があった。
コーヒーが好きで、この仕事を続けていきたい。
けれど、業界の賃金構造を考えると、好きな仕事を続けていくためには独立するしかない。
「やりたいなら、やるしかない」。
そんな覚悟から、自分の店を始めることになった。
開業当時は、今ほど「良い豆を使ったコーヒーを楽しむ」という文化が広く浸透していなかったという。
だからこそ、砂田さんが目指したのは、良い豆を使いながらも、できるだけ手頃な価格で提供すること。
「美味しいコーヒーを、できるだけ多くの人に飲んでもらいたい」。
その考えは、現在の店にも受け継がれている。
大久保を選んだ理由
店を構える場所として選んだのが、大久保だった。
千葉生まれ、千葉育ちの砂田さんは、千葉県内で物件を探していた。
その中で大久保に目を向けたのは、街に活気があり、同業の店が比較的少なかったからだ。
当時から喫茶店はあったものの、エスプレッソマシンを備えたカフェは少なかった。
そこに可能性を感じた。
そして大久保には、もう一つ大きな特徴がある。
学生が多い街であることだ。
学生として訪れたお客さんが、卒業して社会人になり、結婚し、家庭を持つ。
そして、人生の節目を迎えたときに、また店を訪れてくれる。
そんな関係が少しずつ生まれていった。
「迷わない店」をつくる
Cafe The Worldの店づくりで特徴的なのが、シアトルスタイルを取り入れたセルフサービスだ。
先に注文し、自分で商品を受け取る。
一見すると当たり前のように感じるが、砂田さんは、その仕組みが自然に伝わるように、店内の動線や配置まで考えている。
「席まで持ってきてもらえるのか、それとも自分で取りに行くのか」。
そんな小さな迷いを、お客さんに感じさせない。
雰囲気だけで店をつくるのではなく、サービスの仕組みそのものに合わせて内装や配置を考える。
Cafe The Worldには、そんな合理的な考え方がある。
「好きなように過ごしてほしい」
Cafe The Worldでは、コーヒーを飲んですぐ帰る必要はない。
仕事をしてもいい。
勉強をしてもいい。
本を読んでもいい。
友人と話してもいい。
ただ、ゆっくり過ごしてもいい。
お客さんがそれぞれの時間を自由に使えることを大切にしている。
その考えは、店名の「時間を止める」という意味にもつながっているのかもしれない。
日常の時間を少しだけ止めて、自分のために使う。
それが、この店で過ごす時間なのだろう。
人気メニューはカフェラテ
Cafe The Worldで特に人気なのが、カフェラテ。
そして、その魅力を支えているのが砂田さんのラテアートだ。
砂田さんには、世界大会への出場経験もある。
確かな技術を持ちながらも、メニューに対して「こう飲むべき」という決めつけはしない。
シロップやホイップを使ったメニューも含め、お客さんが「飲みたい」と思ったものを楽しんでもらえばいい。
コーヒーには、いろいろな楽しみ方があっていい。
そんな柔軟な考え方も、Cafe The Worldらしさの一つだ。
この店に積み重なってきた時間
砂田さんが店を続けてきた中で、特に印象に残っているのが、お客さんの人生の節目に立ち会えることだという。
学生だったお客さんが就職した。
結婚した。
子どもが生まれた。
そんな報告をしに、再び店を訪れてくれる。
かつて親と一緒に来ていた子どもが、大人になってからまた訪れることもある。
具体的なエピソードについては、お客さんのプライバシーもあり多くは語られない。
それでも、長く店を続けてきたからこそ見えてくる「人の時間」がある。
店名は「時間を止める」。
けれど、実際には、この店にはたくさんの人の時間が流れ続けている。
そして、その時間の一部が、店の歴史になっている。
変わっていく街と、変わらないもの
大久保の街では、周囲の店舗が入れ替わることも少なくない。
それでも砂田さんは、街そのものの本質が大きく変わったとは感じていないという。
店が変わり、人が変わり、街の風景が少しずつ変化していく。
その中で、一つの店を長く続けることには意味がある。
学生の頃に通っていた人が、何年後かにまた訪れる。
その繰り返しが、街と店とのつながりをつくっていく。
これからも続けていくために
現在、砂田さんが考えているのが「自家焙煎」だ。
コーヒー豆の価格が上がる中で、これまでのように良いコーヒーを手頃な価格で提供し続けるための方法の一つとして検討している。
もちろん、自家焙煎を始めれば仕事量も増える。
設備やオペレーションなど、考えなければならないことも多い。
それでも、どうすれば店を続けていけるのか。
砂田さんは、現実を見ながら次の形を考えている。
「より良い店ができれば、店をやめることもある」。
そんな率直な言葉もあった。
店を続けること自体を目的にするのではなく、お客さんから必要とされる店であり続けられるか。
そこに、砂田さんの経営者としての現実的な姿勢が表れている。
カフェは「仕事場」
最後に、砂田さんにとってCafe The Worldとはどんな場所なのかを聞いた。
返ってきた答えは、シンプルだった。
「仕事場」
長く続けたい。
けれど、ただ続ければいいわけではない。
お客さんに必要とされるために、考え、工夫し、変えていく。
それは、一杯のコーヒーを提供することだけではない。
店を訪れた人が、自分の好きなように時間を過ごせる場所を守っていくことでもある。
「時間を止める」という名前を持つカフェ。
けれど、そこで止まっているのは、時計ではない。
忙しい日常の中で、ほんの少しだけ自分の時間を取り戻す。
そして、何年後かにまた戻ってきたとき、そこには以前と変わらないコーヒーと、積み重なった時間がある。
大久保の街で、Cafe the Worldは今日もそんな時間をつくっている。

Cafe The World
〒275-0011 千葉県習志野市大久保3-15−2
営業時間 平日9:00~20:00
定休日 不定期
https://www.instagram.com/cafe.the_world